長谷邦夫はてなダイアリー・アーカイブ

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「マンガ研究」6・第四回大会特集号を読む。

<研究発表>「美術系短大におけるマンガ文法授業の実践」
南雲大悟(日本大学・非常勤講師)が、そのゼミでの生徒の
無反応ぶりを伝えている。
 ぼくはかつて高校時代のグラマーの勉強のつまらなさを
思いだした。文法を勉強しても、英会話ができないつまらなさ
である。短大の女生徒たちは、おそらくマンガ作品そのものを
まだほとんど描けていないはずである。
 16ページ作品が未体験ゾーンにある。<物語>自体も書いた
ことがない。専門学校の新入生など90%以上がそうだ。同人誌
の体験が無い。
 こうした状況で<マンガの文法>を云々しても、ほとんど彼女
たちにとってリアリティが無いのである。

 まずは4〜16ページのマンガを描かせる〜という<作品創作>
のための、明確な課題なりテーマを与えてあげるほうが大切なのだ。
 ぼくは、文学部でマンガそのものを描かない生徒に、「一日・日常」
という課題で、シナリオ(400字5枚以内)を書いてもらい、それを
チェックした上で、8〜16ページのネーム・コマ割りを書いてもらう。
絵は描かなくてよい。

 これで実験してみると、全員が作品を完成できる。コマ割りの文法
は1コマのみである。まずはこれでいいのだ。生徒にも好評で、来期
の生徒にもやってあげてくださいね〜と生徒に言われたくらいだ。
 絵を描ける専門学校では、もうすこし、マンガ的な課題を出すが、
基本的には同じである。
 マンガ文法は、現代の若い人にとっては、もう無意識に頭に入って
いる。それを意識的に使いこなす〜ということになるのは、自分の
作品を「雑誌」というメディアに登場させたあと、作品内容が他者と
違った個性を表出したくなったときに、自分で考える問題なのだと
思う。そのとき、基礎的なコマ割り表現がどうなっているのかが、彼女
の中で検討されねばならない。

 そのレベルに達した人は、初めてぼくが「マンガ史」の中で教えた
マンガ表現の変化が、どのように起きたのか、作家がどう意識的に
コマ割りを変化させてきたのか、という話しがヒントになるだろう。
 そこに想いが至らない人は、(よほど優れた担当者にしごかれない
限り)デビューしても、数年を経ずに消えていく運命にある。
 
 
 この話しを、生徒にしつこく講義すれば、彼女たちはイヤナ説教を
聞かされるような気分になるだろう。
 だから、本腰入れてやりそうな生徒にそれとなく言う程度だ。分ら
ない生徒には、編集部へどんどん持ち込みに行きなさいと勧めている。
彼女たちは、そこでぼく以上のキビシイ言葉に出会うはずだから。
 適当にほめられたりしたら「それはボツの証拠だよ。早く帰って
ほしいから褒めるんだ」「細かくワルグチ的に言われるようだったら
それは、直しておいで〜ということで、君に可能性を感じている証拠。」
「プロとは、どのようにも<修正>できる!人間を言う。これを忘れる
なよ。修正なし、ボツ無しで育ったボクのような人は、ヘタなマンガ家の
ままだ。甘いのさ」とか…。

 南雲先生、がんばって下さい!!