長谷邦夫はてなダイアリー・アーカイブ

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松本清張『黒い手帳』(中公文庫)の中に

カルネアデスの舟板”という話からヒント
を得た『詐者の舟板』という作品についての
記述がある。
 カルネアデスギリシアの哲学者だが、あ
るとき、弟子達に一つの問題を出した。
 それは<大海の中で船が沈んだと仮定して
そのときに二人の遭難者が一枚の船板にすが
って漂流している。しかし、一枚の板に二人
は無理で、一人ならば助かる見込みがあるが
二人だと沈むおそれがある。その場合、一人
の男が相手の人間を海中に突き落とし、溺死
させたとしたら、それは罪になるか、ならな
いか?>という命題である。
 今回のレポート課題の3つ目は、これと深
く関係している。『半神』の双子の生死の問
題だ。これを最近の医学界での<生命倫理
という視点から考えたら、どういう答えが出
るであろう?との問いを、学生に書いてもら
っていたのだ。
 カルデアネスは、それは罪にならない、と
裁断した。<緊急避難の法>として、現代の
刑法の精神にもなった〜と清張は書いている
が、果たしてそれでいいのか??