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『不良少年のSF映画史』(2回目)・長谷邦夫

 それが終えると、ぼくは近所の映画館へ行って、『不礼奴走者』
ブレードランナー)、『不潔不快物体』(遊星よりの物体X)、
『不自由台湾動画作者協力・電脳計算機作画英雄』(トロン)、
『不思議幻覚槽』(アルタードステーツ)などを、中国兵士達に
混じって見た。
 もちろん、映画の言葉は中国語に吹き替えられてはいたが、もと
もと日本
のフィルムなのでスーパーは入っているのだ。
 中国の軍票を持っていない同級生たちは、こうした映画館には入
れず、放課後ぼくの自慢話に耳をかたむけてはくやしがっていた。
 さて『スター・ウォーズ』のストーリーであるが、なにしろ前述
のように多数あり、ぼく自身も二十七本も見ているので、どれがど
れやら、頭の中で細部が輻輳していてよくわからない。
 そんなことを言うと、ぼくのファンから、いい加減でもいいから
ムード・ストーリーで書いてみてくれと言われそうだが、ぼくは不
正確というのが大嫌いだ。そこで、やはり戦前のシネ旬から引用し
てみることにする。
 そのときに、思い出した細かいギャグがあったらアトランダムに
書いていってみよう。


 シネ旬試写評欄で飯田真美氏はこう書かれている。
「昨年度、米国二十世紀フォックス映画株式会社で製作された大作
映画に『スター・ウォーズ』といふ作品があった。
 二重太陽が激しく照りつける熱砂の星タトウィン。今しもその乾
ききった大気圏へ突入しようといふ反り返ったペニス型の宇宙船が
一隻―ー。
 と、その後から、エネルギー・ビームを放ちながら巨大な幻魔巡
宇宙戦艦ヤマトが襲いかかる!」
 ここには経済的に日本にリードされてしまった米国の哀しみのよ
うなものが感じられてしまうのだが、まー、それはどーでもいー
よーなものであった。
 大破し、宇宙戦艦に捕らえられたルーク・スカイウォーカーとハ
ン・ソロとロボットのC3POは、船内の留置場に放り込まれてしまふ。
すると、そこに一人の美女が居る。レーア・オーガナ姫はオナニー
の最中で、今やオルガスムスに達しようと……」
 と、イントロダクションの部分を飯田氏は紹介しているのだが、
ここには全くギャグに触れた部分が無いのがおかしい。反り返った
ペニス型の宇宙船というのが、おかしいといえば言えるのだが、
これは筆者の記憶によれば『フレッシュ・ゴードン』の宇宙船で
ある。飯田氏はどうしてこんな勘違いをしたのか。
銀河帝国の圧制に抵抗して立ち上がろうとルークは叫び、オーガ
ナ姫と熱いキッスを交わす。」


 このオーガナ姫を演じたのが、グレース・ケリーの娘キャロライン
が、ロベルト・ロッセリーニの孫と恋愛した結果生まれたブルック・
シールズだ。
 当時、ポルノ女優の母と呼ばれた美保純の若かりしころとそっくり
で、大学生の間で大変な人気があった。ぼくらは彼女を<トナ・ドル
>と呼んだものだ。つまり、その昔、オナニー用のペット的存在を
オナペットと呼んでいたのだが、それが低年齢化してオナニー用の
アイドル<オナ・ドル>となり、その後、隣のお姉さんを妄想しない
とオナニーが出来ないという時代がきて<トナ・ドル>となったので
ある。
「さて、この宇宙船とヤマトの戦いを、タトウィンの地上で目撃した
若者がいた。E.T.である。」
 さっぱりギャグが出てこない。しかしぼくは、この映画をゲラゲラ
笑いながら見ていたのだ。
 ロボットが中国語それも広東語で喋るのをただ面白がっていあだけ
なのかも知れない。それとC・3POのボディに日立電機のマークが入っ
ていたのを笑った。なんでも『2001年宇宙の旅』というスタンリ
ー・ルービック・キュービック監督の作品では、宇宙船内のホテルが
ヒルトンと書かれてあったそうだ。
 こういう場面は、いかにも資本主義的で、まじめな中国兵達が嫌っ
たかといえば、そうではない。このたびの戦争を勝利に導いたのは日
本の日立とアメリカのIBMが中国市場を争った結果、両社が最高級の
スーパー・コンピュータを、中国に提供。それをドッキングした超々
スーパー・コンピュータ軍事システムを中国が独自に開発してしまっ
た結果なのだ。
E.T.は安物缶ビールを飲んでは酔っ払い、オナニーばかりして遊ん
でいた。だが父のチューバッカは、それを取り上げると、彼に理力刀
を渡し、ルークとオーガナ姫に協力せよとさとした。」<続く>